【連載5】八日目の蝉 | 牧歌組合~45歳からの海外ミュージシャン生活:世界ツアーに向けて~

【連載5】八日目の蝉

【連載5】八日目の蝉

2008年から2011年まで、ヤフーに勤めていた時代、部長だった。「ドラマ部」の部長。正式な役職の部長ではない。あしからず。


社内wikiに専用ページを設置して、毎四半期(=クール)ごとに、新規スタートするテレビドラマをリスティング、部員ごとに「どのドラマが面白いか」を期初にBidding・期中に中間総括・期末にフィードバックして評点、コメントする。殺伐とした開発現場における一抹の清涼剤としてのテレビ・ドラマの話題。そうそうたるメンバーが参加していた。とても楽しかった。だが、この”ドラマ部”は、部員の転職や、まあ他にも色んなことがあって2011年秋、空中分解した。というか僕はそこから逃げざるを得ない運命だった。楽しい時間と場所はいつも長く続いてくれない。社内wikiのページは、もう削除されてしまったのだろうか。誰か教えてください。

2005年に当ブログでJASRACと”紛争”めいたことをしたこともあって(楽曲コード分析&タブ譜採譜は一応、合法と認められています。2005年~2009年の当ブログ参照)、僕は意外と「著作権」にうるさい。好きなミュージシャンの動画を「好きだから」という理由でアップロードしたり、所謂”ファン・アップロード”のテレビドラマや映画をお金も払わずに平気で見ているひとを見ると、「え?」と疑ってしまう。本当に好きなのだったら、その作者とコミュニケーションをとり、ちゃんと対価を払ったうえで使わせてもらう、などの敬意と礼儀を払うべき。いくらお金がないときでも、敬意と礼儀の点で貧乏になったら人間おしまいだ。

偉そうなことを言った直後に恐縮だが、ベルリンに来てからどうしても見直したくなって見たテレビドラマがある。それは、2010年にNHKの火10(火曜日22:00枠)で放映された、角田光代原作、檀れい&北乃きい主演の『八日目の蝉』。「ドラマ部」で僕はこのドラマにS(pecial)評点した。2013年秋、「マサタカ保育園」が空中分解して、隣の子供たちにもうドイツの絵本の読聞かせができなくなったとき、よその子供を誘拐した女・希和子の3年半の逃亡劇の心境をもっとよく理解できるのではないかと思ったので、どうしても見直したくなって、見た。見直すたび、「あと何度逃げれば、神様は私を許してくれるのだろうか」という希和子の言葉、そして、ドラマ主題歌、城南海が歌う沖縄民謡「童神」に、さめざめと共感して泣く。

タンゴバンドのことばかり書いてきたが、僕は主に他に二つ音楽活動をベルリンで行っている。
そのひとつは、「日本の音楽&文化をドイツの老人ホームにお届けする」というプロジェクト。親友大竹くんの進言で、バンド名は「サディスティック巫女バンド」にしようと思っているが、老人ホームに暮らす、ドイツの淑女たちに、バンド名をドイツ語でどのように説明すればいいか、いま頭を悩ませている。2014年2月からこの活動を始めた。詳細はおいおいしつこく書かせてもらうとして、
そこで僕は雅楽の龍笛と、沖縄の三線(また急に始めてます)と、ヤフー時代に”画伯”と呼ばれていたお墨付きの描画技術を駆使した紙芝居作成を担当している。紙芝居では、漢字が象形している意味をドイツ語で解説している、しようと思っている。この「サディスティック巫女バンド」で「童神」をレパートリーとしていて、龍笛か三線で演奏している。老人ホームに暮らす、ドイツの淑女たちから「この曲は本当にいいわね~」と言われると、とても嬉しい。子供に対する親の気持ちは、どこでも同じだ。共鳴と共感がなんであるか、しみじみと実感できる時間と場所。

もうひとつのバンドは、ドイツの女の子バンド、「エステル・シュバルツロック」。スペイン語、スウェーデン語、英語、ドイツ語で曲を書き、ピアノとギターで弾き語るエステルのバンドで、
僕はコントラバスと龍笛を演奏している。ある日、リハーサルの後の帰り道、バイオリン奏者のユーディットが訊ねた。「ドイツ語のUrlalbを意味する、日本の漢字の『休』って、ヒトが木にもたれかかって休んでいる風景を描いてるんでしょ? ものすごく論理的ね」。「え?あ、ああーーーーーーーーーーーーーーーーそうそう」と答えたが、自分の頭の中での彼女のドイツ語から日本語アタマへの翻訳、そのこと(「休」の象形文字としての成り立ち)を思い出すために、シンコパで弓を持ち替える以上の時間、約8000ミリ秒が僕には必要だった。オッサンになったものだ。彼女は日本語を勉強している。「日本の音楽とかダンスってどんな感じ?」とユーディットが訊くので「ハイサイおじさん」を聴かせ、踊ってみせた。そのあとバンド内で「ハイサイおじさん」がブームになり、ユーディットと一緒に「ハイサイおじさん」をレバートリーにすることを提案中。ガブリエルと同じく、ユーディットとは目線と音だけで会話ができる。というか、彼女には”ボケ”の才能があり、ライブやリハーサルでの演奏中、音や目線でボケてこっちを爆笑させようとしてくる。笑いをこらえるのにいつも一生懸命。一緒に演奏できて本当に楽しい。8001ミリ秒目の蝉。そして、数字の単位に「本」とか「枚」とか、別々の単位をつけることがスゴい、とユーディットは日本人に敬意を払ってくれる。


3月8日(土)、クロイツベルクの「Cam-ba-la-che」でライブがありますので、お越しいただけるヒトは何卒。未完成の種田ンス。

はるか離れた故郷、日本を思うとき、それを過去としてフラッシュバックするだけでなく、こういった友達たちと一緒に、共感しあい、敬意を払い合い、何か新しいものを創り出しながら、暮らしていきたい。「ドラマ部」も「マサタカ保育園」も空中分解してしまったが、今にとって僕の居心地がよく、大切な場所は、これら3つのバンド(「エステル・シュバルツロック」、「サディスティック巫女バンド」、そしてガブリエルやタトーとのタンゴバンド「ラ・ベルリンガ」)だ。

あと何度逃げれば、神様は私を許してくれるのだろうか、といつも思うが、僕は命がけでこの場所を守りたい。もう「予想どおりの失敗」はしないつもりだが、またするかもしれない。いずれにせよ、「僕には帰れる場所があるんだ」(アムロの台詞から引用)と感じていたい。
(つづく)






ベルリンで様々な音楽活動を展開中!日本でなかなか聴くことが出来ない皆様に、厳選されたリハーサル、ライブ音源など秘蔵音源を頒価にてメール販売します!あっと驚くミュージシャンとの共演音源も?!


dukkiedukkie@(半角アットマーク)yahoo.co.jp


までメールをください。


ライブの写真、動画などはFacebookに随時アップデートされていますので、


Masataka Koduka


に友達リクエストを送付してください。以上よろしくお願いします!