Robert Wyatt "Shipbuilding"
最近、最も入れ込んでいるアーティストはベルリンのマーシャ・クレラ(Masha Qrella)さんなのであるが、 彼女の音楽に触れるたびに、その「音楽的さわり心地」とか匂いから、ロバート・ワイアットの音楽をたびたび思い出してしまう。 ロバート・ワイアット「Shipbuilding」 で、今日は上記曲を。 エルヴィス・コステロと彼のアトラクションズにいた元デフ・スクールのクライヴ・レンジャーの作曲で、 80年代初頭のフォークランド紛争勃発に抗議して作られた作品。 キーはCメジャーで、4/4拍子、シャッフルビート。 【I】イントロパートのコード進行は、
ベースラインが、D->C->B->Gと下降していく心地よいライン。 Dm, Fはサブドミナントで、トニック代替のEm7に至る前にその完全5度であるBをルートとしたディミニッシュコードを 遷移コードとして置き、Bdim=Fdimでもあるため、2小節目のFからもなめらか~に遷移しています。 【A】パートは、
マイナートニックであるAmに一応転調してから、トニックC、完全4度上昇でサブドミナントFに行って、 サブドミナントマイナー代替であるbVI=Abへ移動。 半音下降してドミナントGを経たかと思うと、サブドミナントマイナー代替bVII=Bb, bVI=Abを美しく下降して、 またドミナントへ至る。 【B】パートの一回目は、
トニック→サブドミナント→ドミナント→トニックのオーソドックスな進行。 「もうすぐ私たちは船を作る仕事に駆り出されるだろう」と悲しく歌うワイアット。 そこからAパートに戻って、2回目の【B】パートは、
トニック(C)->サブドミナント(F)->ドミナント(G)->マイナートニック(Am)-> ドミナント(G)->マイナートニック(Am)->ドミナント(G)->トニック(C) とドミナント⇔トニックの揺らぎを加えて、揺らぐ不安な心理を強調。強調してから、 サブドミナントマイナー(Bb)から、完全4度上昇でIIIb(Eb)、また完全4度上昇でサブドミナントマイナーbVI=Abを挟んで、 切なさを際立たせてから、半音下降してドミナントG、完全4度上昇でCで解決という。。 美しい、流れるようなコード進行です。 戦争・政治に反対する歌や表現などには露骨なものも色々あるのですが、 「真珠を探して、海に潜ることだってできるっていうのに、 戦争で死ぬために海に突っ込んでいくなんて…」 という「静かな抗議と怒りのメッセージ」に深く共感します。 【このコンテンツは批評目的によるElvis Costello氏, Clive Langer氏の音楽の引用が含まれています。音楽の著作権は著作権者に帰するものです。また、個人的耳コピのため音楽的には間違った解釈である可能性もありますが、故意に著作権者の音楽の価値を低めようとするものではありません。】 |