アコースティックR&B | 牧歌組合~45歳からの海外ミュージシャン生活:世界ツアーに向けて~

アコースティックR&B

◆ロゼッタ・ハイタワー(Rosetta Hightower)


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アコースティックなギターをフィーチャーした R&Bの一枚、
ということでこのアルバムを。
British Funk と呼ばれることもあるが、ジャンル分けが超微妙な一枚。


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Rosetta Hightower "Hightower"
CBS 64201 (UK)
1971年リリース

(残念ながら入手困難。自分も3万円以上で買った。。)



▽曲目
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A-1, Why(Hightower/Green)
A-2, True Love Adventure(Gretsch/McNair)
A-3, My Back Yard(Craddock/Gibson)
A-4, Michael(Craddock/Gibson)
A-5, Black Bird(Lennon/McCartney)
A-6, One Thousand Nine Hundred & Seventy Years(Elbert)
B-1, We've All been Together(Gretsch/McNair)
B-2, Time of Year(Craddock/Gibson)
B-3, Selfish Woman(Craddock/Gibson)
B-4, What a Day it's been(Craddock/Gibson)
B-5, Another Uneventful Day(Gretsch/McNair)
B-6, Rocking Chair(Labi Siffre)
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▽パーソネル
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Rosetta Hightower, vocals
Jimmy Price, trumpets, trombone, brass arrangement(A-6)
Bobby Keys, tenor sax, brass arrangement(A-6)
Colin Green, guitar
Henry McCullough, guitar
Alan Spenner, bass guitar
Bruce Rowlands, drums
Gordon Beck, keyboards
Ian Green, keyboards, arrangement, producer
Ken Craddock, keyboards, acoustic guitar(A-4,B-4), vocals(A-4,B-4)
1970年8月ロンドン I.B.C スタジオ録音
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※クレジットはないが、B-4の フルート演奏は Harold McNair に間違いない。


何で、この一枚からとりあげたいかというと、
この一枚にものすごい音楽史が塗りこめられているから。
非常にすばらしい作品であることはもちろん。


▽ロゼッタのバイオグラフィ

ロゼッタは、1944年6月23日フィラデルフィア生まれ。
フィラデルフィアのジュニアハイスクール時代オーロンズ(Orlons)を結成。
Orlons は 1961~1968に活動した R&Bコーラスグループ。

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Cameo-Parkway Records と契約し、何枚かのレコードを出している。
1968年、本作のプロデューサ、Barry Ian Green と結婚して、渡英する。

Orlons はフィリー・ソウルの歴史の一幕でもあり、
フィリー・ソウル→ブリティッシュ・ファンク、という
奇妙な越境系図ができるわけ。


▽ミュージシャンシップと歴史的背景


参加ミュージシャンを色分けすると

【1】作曲は、Ginger Baker の Airforce組
 -a) 元ハッピーマガジン系(Craddock, Gibson)
 -b) エアフォース系(Gretch, McNair, Colin Green)
【2】ホーン隊は、アメリカ南部スワンプ組(Price, Keys)
【3】リズム隊がグリースバンド組(McCullough, Spenner, Rowlands)
【4】ブリティッシュ・ジャズ組(Ian Green, Gordon Beck)


 【1】Airforce 組
  元クリームのドラマー ジンジャー・ベイカーはブラインド・フェイス解散後、
  エアフォースを結成、アフロ音楽に傾倒していく。
  (多分、アフリカ音楽を英米文化圏に紹介した功績は大なのでは?)


  -a) Kenny Craddock(キーボード、ギター)と Colin Gibson(ベース)


  ジョン・レノン『イマジン 』やイエスのドラマー、アラン・ホワイト(Alan White)。
  彼の出身バンド、ハッピー・マガジン(Happy Magazine)での仲間が
  クラドックとギブスン。
  その後も Bell + Arc ,  Lindisfarne, Snafu などで活躍した。

  この2人はイギリスの(小さな)名曲ライターチームで、その後も
  Mark-Almond 'I'll be Leaving Soon'(『復活 』に収録)

などの小さな名曲を提供しつづけた。
  曲のセンスとしてはアコースティック・フォーク風な感じ。
  
  彼らの名前を知っているのは、多分英プログレッシブ・ロックファンで、
  黒人音楽とは縁が遠そうな気がするが、
  本作のセッションでのメインアイテムが彼らのセンスで書かれている、
  ということが面白い。


  -b) Harold McNair, Rick Gretch, Colin Green
  同じく曲を提供している Harold McNairはジャマイカ出身の木管奏者で、
  60年代に渡英、ドノヴァンのレコーディング に参加している。
  作曲者にGretsch とあるのは
  おそらく

  
  ブラインド・フェイスのベーシスト(Rick Gretch) のことで、
  彼も Airforce に参加している。

  ギターで参加している Colin Green は、
  ジャズっぽいギタープレイを得意とする元 Blue Flames メンバー。
  同僚の Mick Eve らとともに Airforce 周辺にいたものと思われる。



 【2】アメリカ南部スワンプ組
  1969年10月ごろ、ローリング・ストーンズはジミー・ミラーの紹介により、
  アメリカ南部のサックス奏者、Bobby Keys を 'Live with Me' の録音に起用。
  (Rolling Stones "Let it Bleed" 収録)。
  エリック・クラプトンが参加した Delany&Bonnieの英国ツアー を経て、
  1970年6月にストーンズの 'Bitch' 録音に参加するなど、
  Jim Price と Bobby keys チームは


  英国ミュージシャンとの共演の機会を増やす。
  その中の貴重な1セッション。


 【3】グリースバンド組
  英スワンプといえば、グリースバンドだが、

  ロゼッタと Joe Cocker の「心の友」録音時に対面 しているはず。
  1970年2月に Cocker のバックバンドとしてのグリースバンドは解散しており、
  1970年8月といえば、 McCullough+Spenner は Spooky Tooth、
  Bruce Rowlands は Heavy Jelly や Terry Reid Band を渡り歩いていた。



  Paul McCartney の Wings にも参加することになる McCullough が

  このロゼッタのアルバムで演奏しているような
  ファンクっぽいカッティングプレイをすることはこの後ほとんどなく、

  (有名だが「マイ・ラブ」のギターソロは彼)
  ロゼッタのアルバムでのプレイはかなり貴重。


 【4】ブリティッシュ・ジャズ組
  ロゼッタの旦那さん、Ian Green は1950年12月ロンドン生まれ。
  Barry Blue に名前を変え 1973年9月「ダンスでごきげん」ヒットを放つが、

  (『Greatest Hits 』に収録 )

  このころは、Revalation, Seven Ages of Man などユニットを率いて
  ジャズっぽい作品を作っていた。Gordon Beck の参加はその人脈。


上記のようなグループのコラボレーションとして、本作が生み出されたわけだ。
一言で言えば、裏ストーンズ、裏クラプトン人脈とも言える、貴重な音楽史の断片です。


参考文献:

『ローリング・ストーンズ レコーディング・セッション』

『エリック・クラプトン レコーディング・セッション』

『ブリティッシュ・ロック大名鑑―一九五〇年代‐七八年』

(↑英国ロックファンの人、必携!)



▽カバー曲


A-5 はビートルズです。

A-6 はAlan Spenerのベース重弦弾きがツボにはまっててカッコイイ!
めっちゃノリノリの名曲なのですが、Elbert って誰かわからない。

A-10 の 'Rocking Chair' はロンドン生まれのR&Bシンガー
Labi Siffre の曲。


これがかなりいい感じ。


基本のビートは↓。

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途中からのギターリフ、かっちょいい。

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